睡眠科学の活用で能率アップ
昼間も眠くて、仕事の能率が上がらないという方もおられるかと思いますが「春眠暁を覚えず」どころか日中もついついうとうとしてしまうのは、睡眠に原因があるのかもしれません。睡眠が科学的に研究されるようになってまだ50年くらいですが、近年の脳科学の進歩によって、睡眠のメカニズムもかなり明らかになってきました。ここでは睡眠を科学的に考えてみたいと思います。
そもそも睡眠の役割とは?
一般に人間は一生の3分の1を眠って過ごしますが、他の動物はかなり様子が異なるようです。とある研究によると、ゾウは立ったままで3時間ほど、キリンはなんと15分だけ(敵に襲われるリスクを避けるためらしい)またクジラやイルカなどは大脳を片方ずつ休ませている(片方ずつ眠る)そうです。ツバメやアヒルも短時間だけ片側ずつ大脳が眠るそうです。(脳を全部休ませたらそれこそ溺れたり落ちたりとかして死んでしまいますから。。。)
人間が深く長い睡眠を必要とするのは、巨大な脳に理由があります。まあ猫も長時間睡眠しますがそれはおいといて。。。(12時間くらい寝るらしいです、猫以外のネコ科の動物も長めなんだとか)
体の大きさに比べて非常に大きくて複雑な脳を持つ人は、メンテナンスのために長い睡眠が必要です。動物実験では、睡眠をとらないと脳の細胞が傷ついたり、アルツハイマー病を引き起こす物質が増加するなどの事象が確認されています。これらの障害は、睡眠をとると解消されるのです。
さらに、脳は睡眠中に、起きているときに経験した様々な記憶を整理します。必要な記憶は分類して収納し、そうでないものは消去されます。そのおかげで、頭がムダな情報でいっぱいにならずに目覚めるといつでも快適に使える状態でスタンバイ出来るようになります。
学習してすぐに寝ると、知識や技能が身につきやすいという研究もあります。脳科学的には、睡眠時間を削って勉強するのは逆効果です。また睡眠中には自由な連想が促進されてクリエイティブな発想が形成されるとも考えられています。人の睡眠は脳を活用するために欠かせないものだったのです。
睡眠のリズムを理解する
睡眠は一般に二つのリズムによってコントロールされており、質の高い快適な眠りのためには睡眠のリズムを理解することが必要です。一つは睡眠中のリズムで、もう一つは眠気と目覚めのリズムです。
まず睡眠中のリズムから考えてみましょう。眠っている人を観察すると、完全に力が抜けて動かないかと思えば、寝返りを打ったり歯ぎしりすることもあります。力が抜けて動かない状態を「レム睡眠」、ある程度身体が動く状態を「ノンレム睡眠」と呼びます。レム睡眠のときには体が眠っており、ノンレム睡眠のときには脳が眠っています。脳と体が同時に眠らないのは、外敵に襲われたときに対処するためと考えられています。(まあ同時に眠ってしまったらそれこそ永遠の眠りになってしまいますが)
レム睡眠は眠りの浅い状態で、多くの場合はっきりした夢を見ています。それに対してノンレム睡眠は眠りの深い状態で、あまり夢を見ないです。入眠(眠りはじめ)するとまず深いノンレム睡眠に入り、それが徐々に浅くなってレム睡眠が現れます。その後は約1時間半のサイクルでノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れ、起きるまで繰り返されます。
一方、眠気と目覚めのリズムは、睡眠をめぐる脳のはたらきです。夜になると眠くなり、朝になると目覚めるのは、「体内時計」と「睡眠物質」に基づいて脳が「眠れ」とか「起きろ」という指令を出すからです。体内時計は生まれつき人に備わっている時計機能であり、「睡眠物質」は疲労によってつくられます。
良質な眠りと目覚めのために
ではどんな眠りが理想的なのでしょうか?睡眠時間が短すぎるのはもちろん良くありませんが、ただ長く寝ればいいというものでもありません。レム睡眠とノンレム睡眠はどちらも必要なものですから、ノンレム睡眠の深い眠りのステージと、ある程度(4~5回)のレム睡眠の回数が必要です。
深い眠りを妨げる要因としては、寝る直前の食事や過度の飲酒による体内からの刺激と、光や音といった外からの刺激があります。なるべくこれらを取り除いて、よい眠りを得てください。
また、寝付きが悪いと睡眠時間が足りなくなくなるとともに、入眠直後の眠りも浅いものになってしまいます。寝付きを良くするためには、昼間に体と脳を適度に疲れさせておいて「睡眠物質」を生産しておく必要があります。また、青く強い光(いわゆるブルーライト)は体内時計を狂わせてしまうので、寝る前に明る過ぎる場所で過ごしたり、パソコンやスマートフォンを使用するのもなるべく控えた方が良いでしょう。(この記事を書いている自分も人の事はまあ言えないがw)
気持ち良く目覚めるようにするのにも睡眠のリズムが利用できます。レム睡眠は脳が起きている状態なので、このタイミングで起きればスムーズに起きられます。そのためにはまずご自分の睡眠サイクルを把握して、起床時間から逆算して寝るようにするのが良いです。また、朝起きたらできるだけ太陽の光を浴びるようにします。そうする事で体内時計が覚醒モードになります。一度体内時計をリセットすると、14~18時間後に身体から睡眠の指令が出されるので、その日の寝付きが良くなります。
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